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2023年4月から中小企業も対象となる月60時間超の割増賃金率引上げへの対応

  • 阪尾コンサルティング事務所
  • 2023年2月6日
  • 読了時間: 3分

 2023年4月1日以降、これまで中小企業に適用が猶予されてきた月60時間を超える時間外労働(法定時間外労働に限る。以下同じ)の割増賃金率が、現行の25%以上から50%以上に引き上げられます。経営にインパクトを与えると同時に、実務面での対応が必要となる内容であるため、いま一度、改正の内容および実務対応のポイントについて確認をします。

[1]改正の内容

 通常の時間外労働の割増率は25%以上とされていますが、2023年4月1日以降、月60時間を超える時間外労働については、50%以上の率で計算した割増賃金を、さらに月60時間を超える時間外労働が深夜(午後10時から午前5時)の時間帯に及んだ場合は、深夜労働に対する割増賃金率25%を加えた75%以上の割増賃金を支払う必要があります。この労働基準法の規定は罰則付きとなっており、法定の割増賃金率を下回っていた場合、労働基準法違反として、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されることがあります。

[2]企業に求められる実務対応のポイント

 今回の改正においては以下の3点の対応が企業に求められます。

法改正の影響の把握と月60時間を超える時間外労働抑制の仕組みづくり

  自社の現在の労働時間の状況を確認し、2023年4月以降に割増賃金率の引上げによりどれくらいの人件費が増加するかというシミュレーションを行い、今後の対応を検討しましょう。検討する内容としては、廃止・削減できる業務の棚卸し、人員配置や業務フローの見直しなどが考えられます。

 また、労働時間管理に対する意識が低い場合には、例えば「1ヶ月の中途で時間外労働が20時間となったとき」のように一定の管理水準を定め、それを超えた時点で従業員・管理者へ時間外労働の抑制を行うよう通知をしていくといった施策などが考えられます。各職場の管理者に今回の改正内容や過重労働に対する従業員の心身への影響を説明し、施策への理解・協力を得られるようにしておきましょう。

就業規則の改定

 割増賃金率は「賃金の決定、計算及び支払の方法」に該当することから就業規則への記載が必要となります。今回の改正に際して割増賃金率を変更する場合は、就業規則の変更が必要となりますので、現在の就業規則の確認および変更を行いましょう。

勤怠管理・給与計算システム等の更新

 1ヶ月60時間を超える時間外労働の時間数を集計や割増賃金の計算ができるように、勤怠管理・給与計算システムの設定を変更したりすることも必要です。設定変更時や運用開始時には、適切な集計や計算ができているか確認することも求められるため、余裕を持ったスケジュールを立てておくことも必要になるのでしょう。

 今回の改正は月60時間を超える時間外労働がない企業においては、実質的に影響はありません。深刻な人手不足が進む中、長時間労働は離職の大きな原因にもなるため、長時間労働の傾向がある企業ではその対策を進めることが重要です。

参考 厚生労働省「中小企業の事業主の皆さまへ 月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます」 https://www.mhlw.go.jp/content/000930914.pdf

 
 
 

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